*ウェーバー 歌劇 「オイリアンテ」序曲 (2024年4月14日 第48回定期演奏会プログラムより)

 モーツァルト(1756–1791)の奥さんのコンスタンツェは、旧姓をウェーバーといいます。カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786–1826)は、彼女の父親の弟の息子で、コンスタンツェとはいとこ同士の間柄でした。ウェーバーの父親は、息子をモーツァルトのような有名な作曲家に育てたいと思ったのかもしれません。劇団の主宰者として各地を回りながら、息子に本格的な音楽教育を受けさせました。プラハやドレスデンの歌劇場の音楽監督を経験したのち、ウェーバーが35歳のときに書いたドイツ語のオペラ「魔弾の射手」はベルリンで大成功を収めました。そのため次に劇場から依頼されて作曲したのが「オイリアンテ」でした。もっとも、このオペラはさほど評判をとることもなかったようで、現在では上演されることはめったにありません。ただし、序曲は人気があって、しばしば演奏会で採り上げられます。ちなみに「オイリアンテ」が初演された1823年の明くる年には、ベートーヴェンの「第九」の初演が行われています。またこの「オイリアンテ」は、ワーグナーにたいへん大きな影響を与えたともいわれています。
 オペラのあらすじをざっとご紹介しましょう。12世紀、フランス王ルイ6世の宮廷。伯爵のアドラールは、領地に残してある妻オイリアンテの美しさと貞節を歌い上げます。それを伯爵リジアルドが嘲笑したのがもとで決闘騒ぎになり、リジアルドがオイリアンテを口説き落とせるかどうか、二人は全財産を賭けて争うことになります。リジアルドは腹黒い侍女と手を組んで陰謀をめぐらせます。そしてついにオイリアンテとアドラールの二人だけしか知らない秘密を探り出し、オイリアンテが裏切りを犯したかのようにアドラールに誤解させます。さてヒロインの運命やいかに……というところですが、亡霊があらわれたり、怪獣のような大蛇が襲ってきたりという展開のあと、オペラは二人の愛の勝利で結ばれます。
 序曲は、弦楽器のほとばしるような輝かしいパッセージで始まります。それに続く木管楽器の付点を伴う上行音形は、アドラールが「妻の貞節を信じる」と歌う旋律です。最強音に至っていったん静まったあと、アドラールが妻との再会を前に歌う「ああ、はかり知れぬよろこび」のメロディを第1ヴァイオリンが奏でます。そして、ゆっくりとしたテンポで8本のヴァイオリンが奏する陰鬱な和音の進行は、亡霊が登場する場面の音楽。最後は冒頭の旋律に戻って、歌劇の幸せな結末を暗示するかのようにして終わります。

(ヴィオラ 鈴木 克巳)

編成:フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、ティンパニ、弦楽5部。

 

 


 

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