*ニーノ・ロータ ファゴット協奏曲 (2022年1月16日 第44回定期演奏会 プログラムより)

 イタリア、ミラノ出身の作曲家ニーノ・ロータ(1911−1979)は、フランコ・ゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」やフランシス・コッポラ監督の「ゴッドファーザー」の音楽で知られ、そしてフェデリコ・フェリーニ監督がロータの音楽を多くの映画に用いたことから、映画音楽の作曲家として名声を得ていましたが、彼自身は「自分はクラシック音楽の作曲家であり、映画音楽は余技に過ぎない」と語っていたことも知られています。ニーノは神童でした。ニーノが8歳のとき、ロータ家の友人だった詩人パガーニは「聖ジョヴァンニ・バッティスタの幼年期」という作品を彼に捧げ、ニーノはそれをオラトリオに作曲しました。4年後にイタリアとフランスで初演されると大成功を収め、ニューヨーク・タイムズは「20世紀のモーツァルト」と賞賛しました。13歳でオペラを作曲し、ミラノ音楽院やサンタ・チェチーリア音楽院で学んだのちアメリカに留学し、バーバーやコープランド、ストラヴィンスキーとも親交を結んでいます。新しい音楽への深い造詣を得て帰国した後は、音楽教師のかたわら、協奏曲や室内楽、交響曲などの作曲ばかりでなく映画音楽にも手を染めます。そしてイタリア民謡やアメリカのポピュラー音楽を映画のテーマに引用するなど、映画音楽と現代音楽の間を自在に行き来する柔軟な才能を開花させました。
 フェリーニはロータについて「彼は非の打ちどころのないイマジネーションを持っていたので、作曲するために私の映画の映像イメージを見る必要はなかった」「ピアノの前に座るニーノに、ただ自分が考えていることを話すだけで、望む音楽が生まれていった」と語っています。このファゴット協奏曲は、コントラバスの「独奏風ディヴェルティメント」やハープ協奏曲ほど演奏機会は多くなく、献呈者などの資料もありません。けれどもこの曲を聴く私たちに音楽から自由な想像を引き出し、また、軽妙でありながらもの悲しくそして美しい多面体なファゴットの音色の魅力も存分に味わえる、ロータからの贈りものであると感じます。

第1楽章 Toccata プロコフィエフを彷彿とさせる、ファゴットとオーケストラの奔放できびきびとした掛け合いが、心地よい風のように駆け抜けます。
第2楽章 Recitativo 最低音のB♭からゆったり駆け上がるファゴットが夜を連れてきたのち、夜と昼が揺らぎせめぎ合いやがてオーケストラと穏やかな夜明けに向かうまでの短い夢を思わせます。
第3楽章 Andantino - Variazioni ホルンの合図から始まるロータらしい優しさに満ちたオーケストラの前奏に迎えられ、ファゴットの牧歌的なテーマに続いて、ワルツ、ポルカ、シチリアーナ、スケルツォ、サラバンド、ギャロップと、色彩豊かなバリエーションが展開します。

 2006年のパウエルのファゴット協奏曲に続き、菅原恵子先生との協奏曲の2度目の共演がかなったうえ、コロナ禍で音楽への様々な制約のなかでも今日ご来場くださったみなさまと、菅原先生のエレガントなファゴットが奏でるロータの温かな音楽の時間を共有できることは何よりの喜びです。

(ファゴット 二村 純子)

編成:フルート 2 (2番はピッコロ持ち替え)、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 1、ホルン 2、トランペット 1、ティンパニ 1、シロフォン 1、グロッケンシュピール 1、ハープ 1、ピアノ 1、弦楽5部。

 

 


 

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 http://www.brokat.jp/