*グリーグ 劇音楽 「ペール・ギュント」から (2017年9月8日 第39回定期演奏会プログラムより)
 ノルウェーの作曲家エドヴァルド・グリーグ(1843−1907)は、自国の民謡や民族舞曲の独特な形式を重視し、作品にその国らしさを色濃く反映させるいわゆる「国民楽派」として、北欧の歴史や伝説、自然等から着想を得て数々の魅力的なピアノ小品や管弦楽曲を残している。彼の代表作である「ペール・ギュント」は、同じくノルウェーの劇作家イプセンの同名の戯曲への付随音楽として作曲された全5幕26曲から成る大作だが、のちにグリーグ自身によって、人気の高い4曲ずつをまとめた第1組曲と第2組曲が出版されてからは、さらに好評を博した。本日の演奏は、その二つの組曲の中から6曲を抜粋し、物語の流れに沿って構成している。
 主人公は夢想家でほら吹きのノルウェーの青年ペール・ギュント。母オーゼと二人で暮らしていたが、王様か皇帝になるなどと言い出し、恋人ソルヴェイグを故郷に待たせて旅に出る。怪しい商売で金持ちになったり騙されて無一文になったりを繰り返すその半生を描く。
「イングリッドの嘆き」村の富豪の娘イングリッドの結婚式に現れたペールは、花嫁を略奪し逃亡するも一夜で飽きて彼女を捨て去る。絶望したイングリッドの心情が悲痛に歌われ、やがて慟哭へと高まる。
「山の魔王の宮殿にて」迷い込んだ森の中でペールは一国を支配する魔王の娘と出会い、権力欲しさに結婚を迫るが、訪れた宮殿で魔王から示される条件は恐ろしいものばかり。逃げようとしたペールは魔王の手下たちに追いつめられ、命からがら脱出する。
「オーゼの死」村に残してきた母が気にかかり、家へ戻ると、そこには瀕死の母の姿が。最後に優しく語りかけるペール。上昇型の主題が下降型に変化したころ、母は息子の腕の中で静かに息を引き取る。
「朝の気分」時は流れ、ペールは新天地モロッコの砂漠で清々しい朝を迎えていた。フルートが奏でる清らかな旋律が広大なランドスケープへと鮮やかに展開する。
「アニトラの踊り」大金を儲けて、預言者と偽り、地元の部族の歓迎を受けたペールは、宴席で官能的に踊る酋長の娘アニトラに魅了されるが、色仕掛けに騙され全財産を奪われてしまう。
「ペール・ギュントの帰郷」無一文から再び財を成した老人ペールは、ようやく旅を終え帰郷のため航海に出た。が、嵐の海に難破。渦巻く下降音型と激しい低弦と打楽器のトレモロが船を転覆させる。
 身一つで故郷の村にたどり着くと、年老いた恋人ソルヴェイグが彼の帰りを待っていた。彼女の膝の上でペールは、その奔放な人生の幕を閉じる。

(打楽器 江尻 明紀)

楽器編成 フルート 2、ピッコロ 1、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ 1、大太鼓 1、シンバル 1、トライアングル 1、弦楽5部。

 

 


 

このサイトはフレームで構成されております。画面左端にメニューが表示されない場合は、下記リンクよりTopページへお越しください。
ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 http://www.brokat.jp/