*ホルスト サマセット狂詩曲(2016年9月11日 第37回定期演奏会プログラムより)

  イギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト(1874−1934)32 歳の作品。タイトルのサマセッ トとはイングランド南西部に位置する州の名称で、内陸部になだらかな丘陵と牧草地が広が る自然豊かな地域である。本作品は、イギリスの民謡を収集して楽譜として書き起こしたセ シル・シャープの勧めによって作曲された。ホルスト自身がこの曲のストーリーについてこう 記している。「穏やかな田舎の村に兵士たちが鳴りもの入りで行進してくる。恋人と結婚を約 束していた一人の若者が、誘われて軍隊に入り、戦争に行ってしまう。兵隊は遠くへ行って しまい、田園の静けさが戻ってくるが、娘はひとり残される」。
  曲は四つの民謡から構成されている。冒頭、オーボエとイングリッシュホルンの中間の大 きさの楽器、オーボエダモーレによって演奏されるのは「羊の毛刈り歌」で、花々が咲き誇 る6 月、農民が羊の毛を刈って自然の恵みに感謝する歌である。次第に楽器が加わり低弦で奏されるのは、戦争に 向かう男の勇ましさを称える行進曲風の「南ドイツ」。曲中で最も勇壮に奏でられる主題となっている。続いて恋人と の別れを嘆く寂しげな「恋人との永遠の別れ」が奏でられる。曲の終盤では、変わらぬカッコウの鳴き声と移りゆく 時代の無常を歌う「カッコウ」が顔をのぞかせ、最後には冒頭の「羊の毛刈り歌」によって静かに曲が閉じられる。
  郷愁を誘う親しみやすいメロディにあふれた本作品。「蛍の光」や「グリーンスリーヴス」など、イギリスの民謡は 日本人の心に良く響くようだ。余談だが、吹奏楽経験者ならば馴染みのあるホルスト作曲の「吹奏楽のための第1組曲、 第 2 組曲」を想起される方も多いのではないだろうか。
  夏が終わり一抹の寂しさを感じる今日このごろ、遥か遠くイギリスの地の風土や人々の暮らしに思いはせながら、 聴いていただければ幸いである。

(クラリネット 吉岡 克英)

編成:フルート 2(ピッコロ持ち替え 1)、オーボエ 2(オーボエダモーレ持ち替え 1)、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、 テューバ 1、ティンパニ 1、シンバル 1、バスドラム 1、スネアドラム 1、弦楽5部。

 

 


 

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