*ベートーヴェン 「レオノーレ」序曲第 3番 (2016年2月14日 第36回定期演奏会プログラムより)

 序曲とは、オペラや組曲などの最初に演奏される曲のことです。とくに劇音楽の序曲は、 幕が開く直前、ざわめく聴衆たちの気持ちを舞台へと引きつけるために演奏され、劇全体 の雰囲気や筋をコンパクトに予告して、期待をあおるものでした。そのため起伏とストーリー 性に満ち、演奏会のはじまりを告げる曲としてもたびたび取り上げられます。ベートーヴェン (1770−1827)はいくつかの優れた序曲を残しましたが、本日演奏する「レオノーレ」序 曲第 3 番は中でももっとも演奏時間が長く、充実した一曲です。
  あれっ、劇とセットならば、なぜ「第 3 番」なの?とふしぎに思った方もいらっしゃるので はないでしょうか。レオノーレ序曲はベートーヴェン唯一のオペラ「フィデリオ」のために書 かれているのですが、実はこのオペラが何回も改訂されたために、序曲もなんと、4 つも存 在するのです。第 3 番は、単独の音楽としては優れていたものの、オペラの序曲としては逆に重すぎ、書きなおされる ことになりました。現在「フィデリオ」の上演時には序曲としてではなく、第 2 幕の間奏曲としてこの第 3 番が挿入さ れることがあります。これは、グスタフ・マーラーが考案した演出といわれています。
  オペラ「フィデリオ」の舞台は 16 世紀スペインのある刑務所です。この刑務所の所長は悪人で、自らの不正を政 治家フロレスタンに暴かれそうになると、彼を無実の罪で地下牢に幽閉しました。フロレスタンの妻レオノーレは男装 して名をフィデリオと偽り、刑務所で働きながら夫を救い出すチャンスを狙います......。
  ソの音の強奏で始まり、さまざまな調をさまよいつつ下降する序奏は、地下牢へとおりていく囚われの夫を表すか のよう。主部はアレグロで、弦による軽快な第 1 主題、ホルンが導く第 2 主題と続きます。劇的な展開部では、トランペッ トのファンファーレが印象的です。これは、劇中で夫を救い出すきっかけとなる、大臣の到着を表しています。フルー トのソロで第一主題が再現された後、いったん演奏は静まります。重なり合う弦のパッセージがプレストのコーダを 導き、レオノーレの勝利と夫婦愛をたたえながら曲は熱狂的に結ばれます。

(ヴァイオリン 宮本 友紀子)

編成:フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、ティンパニ 1、弦楽 5 部。舞台裏にトランペット 1。

 

 


 

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