*ストラヴィンスキー バレエ音楽「カルタ遊び」(2015年9月13日 第35回定期演奏会プログラムより)

 イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)は、指揮者、ピアニストとしても活躍した20世紀を代表する作曲家のひとりです。ロシアに生まれ、法律を学ぶためサンクトペテルブルク大学に在学していた最中に作曲家を志し、ニコライ・リムスキー=コルサコフ(1844-1908)に作曲法や管弦楽法を学びました。
 作曲家には時代などによりさまざまな作風があり、たいていはひとつの作風に終始するものですが、ストラヴィンスキーはその生涯の間に次々とスタイルを変えていったことでも知られています。特に有名な初期の3つのバレエ音楽「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」は、初期の原始主義時代に当てはまるものです。本日演奏する「カルタ遊び」はその3曲よりも後の1935年から1936年にかけて作曲された、新古典主義時代を代表するバレエ作品ですが、ストラヴィンスキーならではの生き生きとした独特のリズムは健在です。
 曲は副題の「3ラウンドの舞踊曲」の通り、ポーカーの3番勝負を表しています。カードを切って配っていく「序奏」のテーマが3曲とも冒頭に演奏されるので、仕切り直しの様子を想像していただけるのではないかと思います。
 第1ラウンドはカードが配られたあと、弦楽器が細かいおどけたリズムを刻み始めると、1人が勝負を降りてしまい、2人が残ります。しばらくはにらみ合いになり、フルートの美しい旋律が彩りますが、「ジョーカーの踊り」がヴァイオリンとトランペットによって不意に始まります。一方の手にジョーカーが現れたのですが、相手を負かすまでには至らず、勝負がつかないまま「ワルツ」に入って終了します。
 第2ラウンドもまずカードが配られ、「行進曲」によって局面は順調に進んでいきます。が、またもやジョーカーが現れ、次々と5つのヴァリエーションが続きます。主題と変奏、という意味ではなく、5つの別々の踊りです。やがてジョーカーをもつ者が勝利し、行進曲が短く戻ってきて終わりを迎えます。
 いよいよ最後の第3ラウンドは、カード配りが終わるとすぐにテンポの早い「ワルツ」が始まります。この辺りには、ドリーブのバレエ「コッペリア」のワルツや、ロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」序曲のテーマ、J.シュトラウスのワルツなど様々な曲の断片が巧妙に織り込まれています。早い段階から姿を現していたジョーカーは、スペードのカードを率いてフラッシュの手に勝利します。しかし続くプレストの部分に入ると、結局もうひとりのハートのロイヤル・ストレート・フラッシュに負けてしまいます。激しく盛り上がっていった曲は、突然1小節の休みを挟み、悪さは終わりとばかりに「序奏」のテーマが戻ってきて結びとなります。

(トロンボーン 林 絵理)

楽器編成 フルート 2(ピッコロ1)、オーボエ 2(コールアングレ 1)、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、トロンボーン 3、テューバ 1、ティンパニ 1、大太鼓 1、弦楽5部。

 

 


 

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 http://www.brokat.jp/