*ビゼー 「アルルの女」 第2組曲(2013年2月11日 第31回定期演奏会プログラムより)

「ここは空気が透き通っていて色彩が明るくて、まるで日本のように美しい」。1888年の2月、パリからアルルに着いたゴッホは、手紙にこう書いています。「跳ね橋」「夜のカフェテラス」など、画家に数々の傑作を描かせたこの町は、地中海に面したフランスの海岸線のちょうど中ほどにあって、ローマ時代からの歴史を持っています。印象派の作家と呼ばれるドーデ(1840−1897)は、ゴッホよりも20年ほど前にこの土地を訪れ、実際にあった事件をもとにして短篇「アルルの女」を書きます。その後、ある劇場から頼まれて作家自身が3幕の戯曲に仕立て直し、ジョルジュ・ビゼー(1838−1875)が音楽を付けました。「カルメン」に着手する前の年、ビゼーが34歳のときのことです。
 アルルにほど近いひなびた村の由緒ある農家の跡取り息子フレデリは、今年20歳。祭りの日にアルルの町で見初めた女に熱を上げ、周りの反対をものともせず、結婚を申し込もうとしていました。ところがそこへ、当の女と2年前から深い仲だったという男が現れます。落胆するフレデリに、幼なじみの娘ヴィヴェットは純愛をささげ、家族の説得も功を奏して、フレデリはヴィヴェットと所帯を持つ気になります。その婚約の祝宴が屋敷で賑やかに繰り広げられている夜、アルルの女が例の男と出奔すると伝え聞いたフレデリは、絶望して納屋の高い塔に駆け上がり、アルルの町を望む窓から身を躍らせて、自ら命を絶つのです。
 そんな物語に、ビゼーが書いた曲の数は、全部で27。作曲家はその中から4つを選んで第1組曲を編みました。きょうお聴きいただく第2組曲は、のちにビゼーの親友の作曲家エルネスト・ギローによって選ばれた4曲から構成されています。
 1曲目のパストラールは、管楽器の力強い全奏で始まり、弦楽器がゆったりとした旋律を奏でます。次は間奏曲。重々しい前奏のあと、アルトサックスが、やさしい節を歌います。3曲目のメヌエットは、ハープの分散和音に乗って、フルートが印象的な旋律を紡ぎます。全曲中で、もっともよく知られている曲ですが、実はこの曲は、ギローが、ビゼーの歌劇「美しきペルトの娘」から転用したものです。終曲はファランドール。婚約の祝いの宴で、村人たちが歌い踊る音楽です。

(ヴィオラ 鈴木 克巳)

編成:フルート 2(ピッコロ 1)、オーボエ 2(コールアングレ 1)、クラリネット 2、アルトサックス 1、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、コルネット 2、トロンボーン 3、ティンパニ 1、シンバル 1、バスドラム 1、プロヴァンス太鼓 1、ハープ 1、弦楽5部。

 

 


 

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