*ドビュッシー 夜想曲(2012年9月23日 第30回記念定期演奏会プログラムより)

 フランスの代表的な作曲家、クロード・アシル・ドビュッシー(1862−1918)は、今年がちょうど生誕150周年にあたります。ピアノ曲から歌劇まで幅広く数多く書かれた作品は有名なものばかり。本日はその中から、1897年から99年にかけて作られた「夜想曲」を取り上げます。
 イギリス人の画家であるホイッスラーの絵から楽想を得、いくつかの経緯をへて完成へと至ったこの曲について、ドビュッシー自身が書いています。「この夜想曲(ノクチュルヌ)という題は、一般的でもっと装飾的な意味に理解していただきたい。音楽形式を指すのではなく、ノクチュルヌという言葉自身が示唆する、さまざまな印象と特別な光を意味しているのです」。実際ほかの作曲家の夜想曲はもとより、彼自身のこのほかの夜想曲や、「月の光」「夜の薫り」といった夜にまつわる作品とは少々趣きが異なります。静寂と優しさだけではない冷たさ、死への憧れと怖れ、空虚な時の流れを感じさせるのです。特に「雲」と「シレーヌ」においては、常に気の滅入るような低音にひきつけられていく旋律に、それらが表現されているように思います。
 美しい女声合唱と共に静寂の中へ音楽が溶け込み、風化して消えていくさまは、後半に演奏する「惑星」の締めくくりである「海王星」とどこか似通った部分もあり、それぞれに馳せる想いは一見違うようでいて、実は同じなのかもしれません。1909年、ロンドンのクイーンズ・ホールでドビュッシーが指揮をしたこの「夜想曲」を、ホルストも聞いていたといいます。
 ドビュッシーは、それぞれの曲についても次のような言葉を残しています。曲によって少しずつ編成が異なり、さまざまな色彩をみせる中に、1曲でもほんの一瞬でも、皆さまにとっての夜を見つけていただければうれしく思います。

 「それは不変の様相であり、その中を雲がゆっくりとメランコリックに流れ、かすかに白く染められた灰色の苦悶のうちに終息する」
 「突然に光がきらめくような雰囲気を持つ踊るようなリズムであり、動きである。それは祭の中を通り抜け、祭と溶け合う行列(まばゆく空想的な幻影)のエピソードである。しかし基本的な部分はかたくなに残っている。それは常に祭であり、祭と音楽の混合物、全体のリズムに関わる光の粒子と祭との混合物である」
シレーヌ 「これは海であり、その数えきれないリズムである。次に、月の光を受けて銀色にきらめく波の間に間に、シレーヌ(海の精)の神秘的な歌声が笑いかけ、通り過ぎる」

(トロンボーン 林 絵理)

編成:Fl.3 (Picc.1), Ob.2, Ehr.1, Cl.2, Fg.3, Hr.4, Tp.3, Tb.3, Tub.1, Timp.1, Cym.1, Sus.Cym.1, SD.1, Hp.2, Strings, 女声合唱

 

 


 

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