*シベリウス 交響曲第7番 ハ長調 作品105(2012年3月18日 第29回定期演奏会プログラムより)

 「あらゆる交響曲の中で最も凝縮されたもの」と言っても、言い過ぎではないでしょう。
 ハイドンの時代に確立した「交響曲」という音楽は、19世紀から20世紀にかけて大きな発展を遂げました。それぞれの作曲家が交響曲の様式に自分の色を加え、実に数多くの交響曲が次々と生み出されたのです。
 ジャン・シベリウスは、交響曲に何を求めたのでしょうか。1907年、ヘルシンキを訪れたグスタフ・マーラーとの対話の中で、「交響曲は全世界を包括するものでなければならない」と言ったマーラーに対し、シベリウスは「内的な動機を結びつける深遠な論理が大切」と言ったそうです。
 シベリウスが試みたのは、交響曲の楽章どうしを融合することでした。第2番ではスケルツォとフィナーレを連続させ、第3番ではその両者をひとつの楽章にし、第5番では前半のふたつの楽章をひとつにしました。そしてとうとう、第7番ではすべての要素をひとつの楽章に収めたのです。
 1924年に完成したこの作品は「交響的幻想曲」というタイトルで初演されました。作曲したシベリウス自身、切れ目のないこの曲に「交響曲」と名付けるには抵抗があったのでしょうか。しかし、翌年の出版の際には「最も妥当なタイトルは『交響曲第7番(単一楽章による)』である」と出版社に宛てた手紙に記しました。やはり「交響曲」でなければならなかったというシベリウスの確信がよく分かります。
 この曲の大きな特徴のひとつとして「ほぼすべての小節は6つの拍に分割できる」ことが挙げられるでしょう。6つの拍は「2+2+2」であったり「3+3」であったり、時にはその両方が同時に進行したりしています。内包された要素どうしの接続箇所は、1小節にかかる時間が3分の2になったり、3倍になったりと、聴き手には分かりにくいよう巧妙に仕掛けられていて、音楽が連続することを妨げません。
 もうひとつ特徴を挙げるとすれば、声部の細かい区分でしょう。これはシベリウスの作品に共通した特徴でもありますが、弦楽器は通常の5声部よりもさらに拡大され、管打楽器を含めた声部ごとの強弱記号がそれぞれ独立して扱われています。そのため、浮かび上がる楽器群が時間とともに変化し、より立体的な音響が生み出されるのです。
 この「第7番」はシベリウスの最後の交響曲となりました。「第8番」は着手されたものの自身の手で破棄されたとも言われています。シベリウスが交響曲に求めたものに、これ以上の形はなかった、そういうことなのかもしれません。

(打楽器 鈴木 力)

編成:Fl.2 (Picc.2), Ob.2, Cl.2, Fg.2, Hr.4, Tp.3, Tb.3, Timp.1, Strings

 

 


 

このサイトはフレームで構成されております。画面左端にメニューが表示されない場合は、下記リンクよりTopページへお越しください。
ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 http://www.brokat.jp/