*サン=サーンス 交響曲第3番 ハ短調 作品78「オルガン付き」(2009年9月21日 第22回定期演奏会プログラム 創立20周年記念コンサート2より)

 サン=サーンス(1835−1921)は19世紀のモーツァルトと称されるほどの「神童」で、2歳でピアノを弾き始め、3歳には作曲を行い、弱冠13歳でパリ音楽院(コンセルバトワール)に入学しています。音楽はもちろん、それ以外にも類まれなる才能を発揮し、フランスの音楽家の中で、唯一国葬で送られた作曲家です。パリ音楽院で作曲とオルガンを学んだサン=サーンスは、やがて作曲家とオルガニストとして活躍するようになります。特にオルガンの腕前は素晴らしく、当時のパリのオルガニストの最高峰といわれたパリ・マドレーヌ教会の首席オルガニストとして、1858年から20年以上も活躍していました。ちなみに本日演奏するフォーレも、この教会の首席オルガニストを1896年から1905年までの間務めています。
 この交響曲第3番「オルガン付」は、サン=サーンスが51歳の時に書かれたもので、彼は「この曲には私が注ぎ込める全てを注ぎ込んだ」と述べています。サン=サーンス自身が指揮を行ったロンドンでの初演は大絶賛の嵐でした。この曲には独創的な部分がいくつかあり、まず第一に挙げられるのは交響曲でオルガンを用いていることです。オルガンは調和の象徴として教会で神を讃美するために使うものと考えられており、オーケストラの一部として使われる交響曲はあったものの、ソロとして前面にオルガンを使うことはセンセーショナルなことでした。4手によるピアノも使われており、曲の持つ華やかな部分をいっそう引き立てています。さらに交響曲としては型破りな全2楽章となっています。とはいえ、実際は各楽章が2部に分かれており、全体は4つの部分から構成されています。またひとつの旋律(主題・テーマ)が少しずつ姿を変えて派生していく「循環主題」の手法を用いて作曲しており、それぞれの楽章(部)の間で主題があちこちに登場することで曲全体の統一感を出しています。
 この曲を書き上げたサン=サーンスは、自分が大きな影響を受けたリストへ献呈したいと考えており、サン=サーンスを評価していたリストもそれを大変に喜びましたが、その申し出の6カ月後にリストはこの世を去ってしまったため、「F・リストの思い出に」という献呈の辞に差し替え、この作品を出版しました。

第1楽章
第1部  Adagio〜Allegro moderato
 弦楽器が紡ぎ出す静寂の中からオーボエやフルートの旋律が神秘的に浮かび上がる。この静寂に問いかけるような木管の提示の後、どこか不安げで心ざわめかせるような第1主題が弦楽器から木管楽器へと受け継がれます。この主題が少しずつ変形して「循環主題」へと発展していき、やがて金管楽器も加わり前半のクライマックスへ。やがて潮が引くように徐々に静寂を取り戻し、その後2本のホルンがオルガンを思わせる低音を奏で、本物のオルガンへと移り変わります。
第2部 Poco adagio
 オルガンの優しく穏やかな和音に導かれて、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロにより美しく瞑想的な主題が提示されます。この動機はクラリネット・ホルン・トロンボーンに受け継がれていきます。第1部が人間の不安や苦悩だったとすると、この第2部はそれを浄化してくれるような音楽になっています。

第2楽章
第1部  Allegro moderato〜Presto
 弦楽器と木管楽器により、激しい対話が繰り広げられます。ここでも第1楽章に現れた主題が見え隠れします。1回目のPrestoでは、木管とピアノが疾風のごとく活躍します。再度、弦楽器と木管楽器の対話の後、2回目のPrestoでは、木管楽器とは対照的な重厚な旋律が低音楽器で表現され、この二つの旋律が絡み合っていきます。
第2部 Maestoso〜Allegro
 第1楽章第2部でのオルガンの響きとは全く異なり、荘厳なハ長調の和音から始まります。木管による優雅な旋律のかけあい、金管楽器による高らかなファンファーレなどが現れ、いくつもの旋律がフーガのように絡み合いながらクライマックスへと向かいます。最後はオルガンとオーケストラが一体となり、壮大な音楽の大伽藍のイメージを築き上げて曲を閉じます。

(フルート 万木 直子)

編成:Fl.3, Picc.(1), Ob.2, Ehr.1, Cl.2, BCl.1, Fg.2, Cfg.1, Hr.4, Tp.3, Tb.3, Tub.1,Timp.1, Cym.1, Trg.1, BD.1, Org, Pf(4手), Strings

 

 


 

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ブロカートフィルハーモニー管弦楽団 http://www.brokat.jp/