*ラフマニノフ 交響曲第2番 ホ短調(2008年9月21日 第23回定期演奏会プログラムより)

 この曲、通称「ラフ2」は、クラッシック音楽にふだん慣れ親しんでいない人でも、一度ならず耳にしたことがあるのではないでしょうか。聴いた人の多くは、そのロマンティックな甘い旋律に心が揺り動かされるといいます。
 ラフマニノフは1873年ロシアに生まれました。幼少の頃より音楽性に優れ、特にピアノでその才能を発揮していました。しかし、1897年、初めて作曲した交響曲である「交響曲第1番」の初演は大失敗に終わり、この曲に対する酷評がもとで精神まで病んでしまいます。その後、治療を続け、ようやく1901年「ピアノ協奏曲第2番」で大成功を収めます。それにより作曲家としての自信を取り戻し、そして不朽の名曲「交響曲第2番」が生まれます。
 ラフマニノフがこの曲を作曲したのは1906〜07年。彼は、当時、その後のロシア革命につながる国内の不穏な政治情勢に煩わされないように、家族とともに生活の大半をドレスデンに移し、作曲活動を続けていました。
 「ラフ2」第3楽章に代表されるようなたっぷりとした哀切に満ちた表現は、まさに、聴く者の胸を締め付けさせながら陶酔させて止みません。彼も望郷の思いに駆り立てられていたのでしょうか。弦で始まるドラマティックなメロディーからクラリネットのソロが始まり、そしてその後に続く美しい旋律。誰もが圧倒されます。
 クラリネットを始めて間もない頃、吹奏楽部の恩師が、部員たちを音楽準備室に集めて、この曲を聴かせてくれたときの印象を私は忘れません。夕暮れの射す準備室で、そのやさしい音色に自然と涙が流れたのでした。
 今日お集まりの皆さんに「ラフ2」の甘美さとそのときの感激を少しでもお伝えできればたいへんうれしいです。

第1楽章 Largo-Allegro moderato ソナタ形式。
 沈鬱で長くゆったりとした序奏から提示部にはいり、第1主題をヴァイオリンが歌い始めると、まるで暗い霧から抜け出したように音楽が動き始めます。クラリネットのやさしいメロディから続く第2主題は、温かみがあり牧歌的です。展開部は第1主題を中心に変化しテンポが速く、金管の不穏な響きによりますます緊張感が高まり激しくなります。しかしその後に続く再現部からコーダまでの音楽は、とても幻想的でありやさしさに満ちあふれています。
第2楽章 Allegro molto
 スケルツォの主部は、ホルンが示す躍動し勢いのある部分と、ヴァイオリンが奏でる豊かで雄大な部分の二つから成り立っています。展開部ではそれぞれが変化し、金管の美しいコラールが鳴り響いた後、最後は、風がやんだかのように静かに終わります。
第3楽章 Adagio
 この楽章は「美しい」のひとことに尽きます。
 若干の説明を加えるならば、その美しさはメロディに由来するのはもちろん、メロディ以外が奏でる美しい和音がメロディに重なったときの音の輝きや、冒頭クラリネットの独奏の際に、合いの手のように入るコントラバスのピツィカートの響きなどによりもたらされます。
第4楽章 Allegro vivace
 終曲は勢いよく疾駆する3連符で始まり、行進曲風の旋律、そして壮麗なメロディに第3楽章のテーマが絡みます。先行する楽章にでてくるいくつかのメロディが回想のようにあらわれるためか、懐かしい詩情が漂いながら、華やかにフィナーレを迎えます。

(クラリネット 木原 桂子)

編成: Fl.3, Picc.(1), Ob.3, Ehr.(1), Cl.2, BCl.1, Fg.2, Hr.4, Tp.3, Tb.3, Tub.1, Timp.1, Cym.1, BD.1, SD.1, Glockenspiel 1, Strings

 

 


 

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