*プロコフィエフ ヴァイオリン協奏曲第2番(2008年3月9日 第22回定期演奏会プログラムより)

 ブロカートフィルでもプロコフィエフ(1891−1953)に挑戦できる機会が巡ってきた。「古典交響曲」「ロメオとジュリエット」等ではなく、いきなりヴァイオリン協奏曲第2番からのスタートである。松田先生との「コンチェルト企画」が実現したからこその演奏曲目である。「ブロカート団員有志によるアンサンブルコンサート」でプロコフィエフのヴァイオリンソナタを披露していただいたこともあり、松田先生のプロコフィエフへの思い入れの深さは周知の事実であった。それを思えばこの選曲には大きく頷けるものだ。

 この協奏曲は1935年に完成し、その年にスペインのマドリードで初演されている。亡命や旅行で10数年間、母国を離れていた作曲家がロシアに帰国してから完成させたものである。オーケストラ編成は、2管編成に打楽器が加わったもので、トロンボーンやチューバだけでなくティンパニも使用されない。編成こそ地味で室内楽的であるが、非常に細かく指定された奏法やオーケストレーションによって彩りの鮮やかな音楽となっている。場面転換とハーモニーの移り変わりがめまぐるしく、リズムも刺激的で「単純な」音楽とは言えない。聴く側にも集中力を要求する音楽ではないかと思える。

第1楽章
伴奏を伴わず、独奏ヴァイオリンが唐突にテーマを提示する。呪文のような旋律に、プロコフィエフの世界へと引き込まれてしまう。全編を通して抑圧・苦悩というような重々しさを感じさせる曲想であるが、ところどころに挿みこまれる木管楽器の旋律に安らぎを感じられる。バスドラムを伴った低弦とファゴットに特徴的なリズムも現れる。

第2楽章
弦楽器とクラリネットによって淡々と演奏される分散和音に乗って、独奏ヴァイオリンが息の長いロマンティックな旋律を奏でる。中間部の軽快なアレグレットも含め、とても懐かしく気持ちの良い響きで安心して耳を傾けられる。合いの手を勤めるフルートとクラリネットにも魅力的な旋律が現れる。不安と混乱の時代に書かれたとは信じられないほど、純粋な美しさを持つ音楽。

第3楽章
情熱的な舞曲で、初演がスペインで行われることが念頭に置かれていたとも推測できるような曲想である。めまぐるしく変化するテンポと拍子によって、躍動感が引き立っている。各楽器の効果的な使われ方も注目点である。打楽器、特にカスタネット、バスドラムの存在が大きい。バスドラムと少数の弦楽器を伴奏に独奏ヴァイオリンが疾走するコーダは、非常に緊張感が高く、視覚的にも訴えかけてくるものである。

(トランペット 仙波靖之)

編成:Fl.2, Ob.2, Cl.2, Fg.2, Hr.2, Tp.2, BD.1, Cym.1, SD.1, Tri.1, Castanets1, Strings

 

 


 

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